フィールド・デザイン思考~右脳と左脳の交差点

弊社代表 見山謙一郎のコラムです

マーケティング3.0は、アジアの価値観

2014年12月10日から11日の2日間に渡り、インドネシアのジャカルタでKELLOGG INNOVATION NETWORK主催のASEAN FORUM 2014が開催された。このフォーラムのテーマは「Change @ Scale, THINK NEW ASEAN!」。ASEAN各国から集まったマーケティングの研究者や実務者たちが、自らの研究報告や活動を発表した。ASEANの人たちの思考は極めてポジティブで、発表にも未来への希望や夢が溢れていたように思う。この雰囲気はどこかで味わったような気がして思い起こしてみると、日本のバブル期の熱狂に近いもののように思えた。

一方、日本からも日本マーケティング協会を中心としたマーケティングの研究者、実務者がスピーチを行なった。印象的だったことは、申し合わせた訳ではないが、欧米流のキャピタリズムとは一線を画した、感性を重視したマーケティング思考について、皆が語っていたことである。アジアの先進国でバブル期の痛みを知り、そして今、キャピタリズムが行き詰りつつあることを身を持って知る日本だからこそ、キャピタリズムの先にある「感性の時代のマーケティング」を語ることが出来るのではないか?そして、それこそが「アジアにおける日本の役割」なのではないか?そんなことをあらためて実感した。

こうしたことを予めイメージしていた訳ではないが、私は講演のテーマを「Japanese sense of worth」とし、キーワードを「温故知新」とした。ASEAN諸国と我々が未来に向かっていくためには、原点=アイデンティティの源を相互理解することから始めるべきと考えたためだ。マーケティング的観点から「温故知新」を捉えるなら、過去と向き合うことは思考や行動の源である“Why”を探求することである。今回のフォーラムの主催者であるヘルマワン・カルタジャヤとフィリップ・コトラー等の共著である「マーケティング3.0」を私なりに解釈すると、マーケティング1.0は「製品」すなわち“What”の探求、マーケティング2.0は「手法」すなわち“How”や“Where”の探求、そしてマーケティング3.0は“Why”の探求となり、ASEANの未来を語る上で有益であると考えた。

バングラデシュやASEAN諸国を訪れ、現地の企業経営者や大学教授と交わる中でいつも議論になるのは、「これまでの欧米型の経済発展、キャピタリズムとは違う、アジア独自の発展の仕方があるのでないか」ということである。その議論の根底にあるのが、「自然と調和して生きようとするアジア的な価値観と向き合う」ということではないだろうか。

よりより社会をつくろうとするマーケティング3.0的思考は、実はアジア的な価値観なのである。

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